zumireの日記

本読んで考えたこと

ファンシーショップは竹久夢二からはじまった

 

竹久夢二---大正モダン・デザインブック (らんぷの本)

竹久夢二---大正モダン・デザインブック (らんぷの本)

 

普通の女の子の 例外にもれず、スミレは竹下夢二の世界が好きだ。

彼は、偉大なデザイナーで企業家である。

女の子が現在と同じように「カワイイー!」と叫ぶ小物をデザインし、日本初のいわゆるファンシーショップを開店した。

実際、今見ても夢二デザインは可愛いものだらけだ。

ファンシーショップ。スミレにとってこれは「くきなみ」という店だった。スミレが生涯において初めて出会った、可愛いものだらけの店である。

細く汚い川筋に並んだ商店の中の一軒だった。友人が教えてくれて、いっしょに入ったその店は、小学生だったスミレにとってかなりお姉さん向きの、敷居の高いお店だった。ピンク系を基調とした、化粧小物などがメインだったと思う。

小学生がホイホイと買えるようなものは何もなかったが、友達の誕生パーティーへ持っていくプレゼントなど、特別の物を買う時に、特別にお小遣いをもらってくきなみへ行く。ずらりと並んだ可愛いものの中から、たいして役には立ちそうもない置物や貯金箱(!)やらを予算内で選び、きれいに包装してもらうのが嬉しくてたまらなかった。自分のものになるわけではないのに、その夢のような店内にいるのは、うっとりする魅惑的な時間だった。

しばらく経つと、くきなみにサンリオ商品が並び始めた。お姉さん向けの商品の中にあるそれは、もろに子どもである自分たちに向けた可愛いものであり、自分たちが買える金額を提示している。サンリオは、スミレたち少女の可愛い魂を、まさにずぎゅんと打ち抜いたのである。衝撃だった。

あっという間にくきなみはサンリオショップになった。お店のガラスドアには依然「くきなみ」とデザインされていたが、中身はサンリオショップそのままで、小学生で溢れかえっていた。

今ではちょっと大きなスーパーに、ショッピングモールに、どこでもあるサンリオショップ。ファンシーショップの代名詞ではないだろうか。

スミレが小さいころには、滅多にない、可愛いものだけを置いている夢の店だった。

そのルーツが夢二にあるかと思うと、カワイイ遺伝子の根深さを感じる。

サンリオショップに狂喜することはもうないけれども、可愛いものだらけのファンシーショップには、やはりずきゅんとすると思うのであった。

 

次の本いこう。