zumireの日記

本読んで考えたこと

陰のある女なんか嫌いだが、影のある暮らしは好き 裏が、幸せ。

酒井順子が久しぶりに面白かった。

 

裏が、幸せ。

裏が、幸せ。

 

 近頃読んだ酒井順子はイマイチな感じが多かった。全然ではないけど物足りないというか。今回もあまり期待しないで読み始めたが、中盤川端康成の「雪国」あたりから俄然面白い展開に。「雪国」に現れる表の傲慢さと裏の清潔さ。若いスミレが読んだ時にはよくわからないが隠微な小説、と思って終わったが、今読むときっと違うんだろう。

続いて泉鏡花水上勉から田中角栄へと話がつながる。いずれも表に対する裏の思いを解説していて、ひどく胸迫る。更にクライマックス、水上勉原発への思いへ。

水上勉はいくつか読んだが、覚えてるのは「飢餓海峡」くらい。原発にこんな思いを残していたなんて知らなかった。これこそ表の傲慢か。

スミレは表でも裏でもない位置に暮らしている。だが、気質は表の街だ。

今日のテレビで鳥取(たぶん、もしくは島根)に移住者が多いという話が出ていた。表の煌びやかさが、もういいやと思える人が、実際に移住するのに抵抗が少なくなったんだろうな。

スミレは雪が苦手だが、「裏」的な暮らしを真面目に考えてみるのもいいと思う。

しかし人間は別だ。「陰のある人」なんかに惹かれるとろくなことがない。貧乏神と結婚するようなものである。小説の登場人物ならいいけどね。

 

次の本いこう。